はじめに
私たちが「保護犬」という言葉を耳にするとき、多くの人が「かわいそうな犬たち」「誰かに捨てられた犬」といったイメージを持つかもしれません。しかし、なぜ保護犬が生まれてしまうのかを深く考えたことはあるでしょうか?
保護犬が増える背景には、人間社会の問題やペット業界の現状、飼い主の意識の問題など、さまざまな要因が絡み合っています。本記事では、保護犬が生まれる主な理由と、その背後にある社会問題について詳しく解説していきます。
1. 保護犬が生まれる主な理由
保護犬が発生する理由には、大きく分けて以下のようなものがあります。
1. 飼育放棄(飼い主が手放す)
2. 迷子になり、飼い主が見つからない
3. ブリーダーの過剰繁殖や崩壊
4. 動物虐待やネグレクト
5. 多頭飼育崩壊
6. 災害や事故で飼い主を失った犬
これらの要因を詳しく掘り下げていきましょう。
1. 飼育放棄(飼い主が手放す)
(1) 経済的な理由
ペットを飼うには、フード代・ワクチン接種・病院代・トリミング代・おもちゃ代など、多くの費用がかかります。犬の飼育費用は年間で最低でも10~20万円以上と言われており、思った以上に経済的負担が大きくなることがあります。
私の場合はは月1.5万円くらい、と予算立てをしていましたが、実際には、3万円くらいです。その差はフード代、おやつ代、トイレシーツ代です。
何もわからなかったときはネット検索して、安いメーカー、商品をベースに考えていましたが、実際には愛犬に使用するには心配な商品もあるため、1商品あたりの単価が高くなりました。
特に以下のような状況になると、飼育を続けることが難しくなり、犬を手放してしまうケースが増えます。
- 失業・収入の減少
- 急な転職や引っ越し
- 病気や介護による支出増加
- 家計の悪化
(2) 生活環境の変化
犬を飼い始めたときは問題がなくても、生活環境が変わることで飼育が困難になるケースもあります。
• 飼い主の高齢化(施設入所や介護が必要になる)
• 子どもが生まれ、犬との生活が難しくなる
• 賃貸住宅でペット不可の場所へ引っ越し
(3) 飼い主の問題
• アレルギーの発症(家族に犬アレルギーが出る)
「こんなに吠えるとは思わなかった」「トイレのしつけがうまくいかない」など、飼い主がしつけの難しさに直面し、手放してしまうケースもあります。
犬のしつけには時間と根気が必要ですが、それを知らずに安易に犬を飼ってしまう人も少なくありません。結果として、「思っていたより大変だった」と感じ、飼育を放棄してしまうことがあるのです。
2. 迷子になり、飼い主が見つからない
犬が迷子になり、保健所や動物愛護センターに収容されるケースもあります。迷子犬が飼い主のもとに戻れない理由としては、以下のようなものが挙げられます。
• 首輪や迷子札をつけていなかった
• マイクロチップが装着されていない
• 遠くまで逃げてしまい、発見が遅れた
• 飼い主が積極的に探さなかった
特に、雷や花火の音に驚いて逃げ出したケースや、地震や台風などの災害で行方不明になるケースが多く見られます。
3. ブリーダーの過剰繁殖や崩壊
(1) 過剰繁殖
ペットショップやブリーダーでは、売れる犬種を大量に繁殖させることがあります。しかし、すべての犬が売れるわけではなく、「売れ残った犬」は処分されるか、保護団体に引き取られることになります。
(2) ブリーダー崩壊
一部の悪質なブリーダーでは、犬を大量に繁殖させた結果、経済的に維持できなくなり、飼育が破綻するケースがあります。
• 飼育環境が悪化し、犬が劣悪な状態に置かれる
• 犬の健康管理ができず、病気が蔓延する
• 自治体や動物愛護団体が介入し、大量の犬が保護される
こうした「ブリーダー崩壊」が起こると、短期間で何十匹、何百匹もの犬が保護される事態になり、動物愛護団体やシェルターの負担が増します。
4. 動物虐待やネグレクト
犬を意図的に虐待したり、適切に世話をしない「ネグレクト(放置)」が原因で保護される犬もいます。
(1) 直接的な虐待
• 殴る、蹴るなどの暴力を振るう
• 食事を与えない
• 極端に狭い場所に閉じ込める
(2) ネグレクト
• 散歩や運動をさせない
• 毛が伸び放題で皮膚病になる
• ケージに閉じ込めたまま放置する
こうした犬たちは、人間に対する恐怖心を持つことが多く、新しい家族に迎えられても人に慣れるまで時間がかかるケースがあります。
5. 多頭飼育崩壊
最近問題になっているのが、「多頭飼育崩壊」です。
多頭飼育崩壊とは?
→ 個人やブリーダーが適切な管理ができないまま、多くの犬を飼育し続け、結果として飼育が破綻すること。
• 無計画に繁殖させてしまう
• 避妊・去勢を行わず、犬がどんどん増える
• フードが足りず、栄養失調になる
こうした状態になると、行政や動物愛護団体が介入し、犬たちは保護されますが、すべての犬が新しい飼い主を見つけられるわけではありません。
災害や事故で飼い主を失った犬
6. 災害や事故で飼い主を失った犬
地震・台風・津波・火災などの災害や、飼い主の突然の事故・死亡によって、行き場を失ってしまう犬も少なくありません。これらの犬たちは、元々大切に飼われていたケースが多いですが、突然の出来事により保護犬として新たな家を探すことになるのです。
(1) 自然災害による影響
日本は地震や台風、豪雨などの自然災害が頻繁に発生する国です。大規模な災害が発生すると、多くのペットが飼い主とはぐれたり、避難所に一緒に連れて行くことができずに置き去りにされるケースがあります。
① 震災で行方不明になった犬
東日本大震災(2011年)や熊本地震(2016年)では、多くの犬が行方不明になりました。家屋の倒壊や津波によって逃げ出したり、飼い主が避難先で犬を連れて行けなかったりすることが原因です。
こうした犬たちは、災害後のレスキュー活動によって保護されることがありますが、マイクロチップや迷子札がない場合、元の飼い主のもとに戻るのが難しくなることもあります。
② 避難所でのペット問題
避難所では、ペットの受け入れ体制が整っていないことが多く、「ペットを連れてこないでください」と言われるケースもあります。やむを得ず外に放す、家に置いてくるなどの判断をせざるを得ないことがあり、そのまま保護犬として扱われる犬もいます。
✔ 避難所のペット受け入れ課題
• アレルギーを持つ避難者とのトラブル
• 吠え声・臭いの問題
• スペース不足
(2) 事故や病気で飼い主を失った犬
飼い主が突然の事故や病気で亡くなった場合、その犬を引き取る家族がいなければ**「孤独な犬」となり、最終的に保健所やシェルターに送られる**ことになります。
① 高齢者が亡くなり、取り残された犬
特に単身者や高齢者が犬を飼っている場合、万が一のときに犬の行き場がなくなるケースが増えています。
近年、「ペットと暮らす高齢者の増加」が問題視されています。ペットは心の支えになりますが、高齢者が突然亡くなったり、認知症や病気で入院した場合、残された犬の世話をする人がいないことが多いのです。
✔ 飼い主の死亡後に起こる問題
• 飼い主が亡くなり、犬が家の中で取り残される
• 近隣住民や行政が介入し、犬が保護施設に送られる
• 高齢者の親族が犬を引き取れない(ペット不可の住居に住んでいるなど)
② 交通事故・突然の入院
飼い主が交通事故で亡くなったり、突然の病気で長期入院することになった場合も、犬が行き場を失うことがあります。
✔ 対応策
• 信頼できる親族や友人に「万が一の時はペットの世話をお願いできるか?」を事前に相談しておく
• ペット信託制度(ペットのための遺言)を活用する
• 動物愛護団体に「もしものときの引き取り」を相談しておく
まとめ
保護犬が生まれる理由には、飼育放棄・迷子・繁殖問題・虐待・多頭飼育崩壊など、さまざまな社会問題が関わっています。
これらを防ぐためには、飼い主一人ひとりが責任を持って犬と向き合い、「最後まで面倒を見る覚悟」を持つことが何よりも大切です。
ペットを迎えるとき、まずは「自分が本当に終生飼育できるか?」を考え、「保護犬を迎える」という選択肢を検討することが、社会全体の保護犬問題の解決につながります。