はじめに
日本での保護犬の状況は、法律や制度、殺処分数などの点で海外と異なる特徴を持っています。
この記事では、日本と海外(主にイギリス、ドイツ、アメリカ)の保護犬事情を比較します。
私は保護犬を譲渡してもうに当たって、日本の制度については調べていたものの、海外の制度については知りませんでした。いっちゃんと暮らしていく中で興味が出てきたので、色々と調べてみました。
みなさんも興味があったら読んでみてください。
1. 法制度の比較
日本
日本では、1950年に「狂犬病予防法」が制定され、動物愛護に関する法整備が始まりました。
その後、1973年に「動物の保護及び管理に関する法律」が成立し、1999年には「動物の愛護及び管理に関する法律(動物愛護管理法)」として改正されました。
この法律は、動物の適正な取扱いや愛護を推進するための基本的な枠組みを定めています。
イギリス
イギリスでは、1822年に「家畜虐待防止法(マーティン法)」が制定され、動物保護の歴史が始まりました。その後、1911年に「動物保護法」、2006年には「新動物福祉法」が施行され、動物の福祉に関する包括的な法律が整備されています。特に2006年の法律では、動物の飼育者に対して「ケアの義務」を課し、動物のニーズに応じた適切な環境を提供することが求められています。
ドイツ
ドイツでは、1871年に「動物虐待罪」が刑法に組み込まれ、動物保護の法的基盤が築かれました。
1933年には「動物保護法」が制定され、動物実験や虐待に関する規制が強化されました。
さらに、2002年には基本法(憲法)に動物保護が明記され、動物の福祉が国家の責務として位置づけられています。
アメリカ
アメリカでは、1966年に「動物福祉法」が制定され、実験や研究に使用される動物の保護が図られました。その後、1985年までに7回の改正が行われ、動物商の免許制や動物実施設の登録制などが導入されています。
アメリカは連邦制のため、各州や都市で独自の動物虐待防止法や詳細な規定が設けられています。
2. 殺処分数と保護施設の状況
日本
日本では、2024年度に約2,434頭の犬が殺処分されています。
この数は年々減少傾向にありますが、依然として多くの犬が新しい飼い主を必要としています。

典載:環境省「犬・猫の引き取り及び負傷動物等の収容並びに処分の状況」資料より
イギリス
古いデータですが、イギリスでは、2010年度に保護施設で約1万~1.3万頭の犬が殺処分されています。これは収容された犬の約10%に相当します。 同じ2010年の日本は40%が殺処分されていたので、当時の日本と比較すると低い割合です。
2024年の日本は10%程度に殺処分の割合は減少しています。
アメリカ
アメリカでは、年間約320万頭の犬が保護施設に収容され、そのうち約35万9,000頭が殺処分(安楽死)されています。保護された犬に対する殺処分の割合は約11%で、現在の日本と同程度です。
3. 飼育環境に関する規制
日本
日本では、動物愛護管理法に基づき、動物取扱業者に対して飼育環境の基準が設けられています。しかし、具体的な数値基準は明記されておらず、適切な広さや環境の確保が求められるにとどまっています。
イギリス
イギリスでは、2006年の新動物福祉法により、飼育者は動物のニーズに応じた適切な環境を提供する「ケアの義務」が課されています。自治体レベルで具体的なケージの広さや高さなどの基準が定められている場合もあります。
ドイツ
ドイツでは、2001年に「動物保護―犬に関する命令」が施行され、犬の飼育環境に関する具体的な数値基準が定められています。例えば、犬舎は断熱効果のある素材で作られ、適切な広さや温度、換気が確保されなければなりません。
4.譲渡活動
日本
(1) 行政と民間団体の役割
日本では、主に自治体の動物愛護センターや民間の動物愛護団体が保護犬の収容と譲渡活動を行っています。近年、殺処分数の減少を目指し、譲渡活動が活発化しています。例えば、ピースワンコ・ジャパンのような団体は、定期的に譲渡会を開催し、保護犬と新しい飼い主との出会いの場を提供しています。
(2) 譲渡の流れ
日本で保護犬を迎える際の一般的な手順は以下の通りです。
私の場合は最初のアプローチがアプリだったため、若干異なります。
- 譲渡会やセンターへの訪問:保護犬と直接触れ合い、性格や特徴を確認します。
- 申込書の提出:里親希望者は必要な書類を提出します。
- 家庭訪問:飼育環境の確認のため、スタッフが訪問します。
- 譲渡:問題がなければ、正式に犬が引き渡されます。
このプロセスを通じて、犬と飼い主双方にとって最適なマッチングが図られます。
アメリカ
(1) フォスターボランティア制度
アメリカでは、保護施設(シェルター)だけでなく、フォスターボランティア(里親ボランティア)が重要な役割を果たしています。一時的に家庭で犬を預かり、社会化やケアを行うことで、犬のストレスを軽減し、適切な新しい飼い主を見つける手助けをしています。
(2) 地域コミュニティとの連携
アメリカでは、FacebookなどのSNSを活用した地域の犬ママ友コミュニティや里親コミュニティが活発に活動しています。これらのコミュニティは、情報交換や支援を行い、保護犬の譲渡活動を支えています。
ドイツ
(1) ティアハイムの存在
ドイツでは、「ティアハイム」と呼ばれる動物保護施設が全国に500か所以上存在し、各地の動物保護協会が運営しています。これらの施設は、犬や猫などの保護と新しい飼い主への譲渡を行っています。
(2) 厳格な飼育環境の審査
ドイツでは、動物保護施設から犬を引き取る際、飼育環境や飼い主の適性に関する厳格な審査が行われます。これにより、安易な譲渡を防ぎ、動物の福祉を最優先に考えたマッチングが実現しています。
5.アメリカのアダプト(Adopt)とは?|保護犬を迎える文化と仕組み
アメリカでは「Adopt(アダプト)」という言葉が、犬や猫などのペットを保護施設から迎えることを意味する文化として広く定着しています。
日本ではまだ「ペットショップで犬を買う」ことが一般的ですが、アメリカでは「保護犬を迎える」ことが当たり前の選択肢となっています。
この記事では、アメリカのアダプト文化、具体的な仕組み、そして日本との違いを詳しく解説します!🐾✨
アメリカのアダプト文化とは?
アメリカでは、毎年数百万頭の犬や猫が保護施設に収容され、そのうち多くが新しい家庭へ譲渡されるという流れが一般的です。
✔ 犬を迎えるときは「ペットショップ」よりも「シェルター」
✔ 「Adopt, Don’t Shop(アダプト、ドントショップ)」のスローガンが広がっている
✔ セレブリティも保護犬のアダプトを積極的に推奨
🐶 Adopt, Don’t Shop(アダプト、ドントショップ)とは?
「Adopt, Don’t Shop(保護犬を迎えよう、ペットショップで買わないで)」は、動物愛護団体が推進しているキャンペーンです。
この運動の目的は、ペットショップや悪質なブリーダーで繁殖される犬を減らし、保護犬の譲渡を促進することです。
🐾 参考データ
- アメリカでの年間保護動物数:約630万頭(ASPCA調べ)
- 年間アダプトされる数:約400万頭
- 殺処分数:約100万頭(減少傾向)
✔ アメリカでは保護施設からペットを迎えることが社会的に推奨されている。
✔ 譲渡数は年々増加し、殺処分数は大幅に減少している。
アメリカのアダプトの仕組み
アメリカには、保護動物のアダプト(譲渡)を推進するための仕組みが整っています。
ここでは、アダプトの流れや具体的な団体について紹介します。
🐶 アダプトの流れ(アメリカ版)
- 保護施設やアダプトイベントに行く
- 地域のアニマルシェルター(保護施設)や、Adoptイベントに参加
- 気になる犬と対面・相性確認
- 犬の性格や健康状態をチェック
- 譲渡申請を行う
- 施設の基準を満たしているか審査される
- 面談やホームチェック
- 家の環境が犬に適しているかチェックされる
- 譲渡費用を支払い、正式に迎える
- 費用は50ドル〜300ドル程度
🐾 代表的な保護団体
✔ ASPCA(アメリカ動物虐待防止協会)
- アメリカ最大の動物保護団体
- 保護犬のアダプトを推進し、全米にシェルターを運営
公式サイト
✔ Humane Society(ヒューメイン・ソサエティ)
- 全米の動物保護施設ネットワークを運営
- 殺処分ゼロを目指し、アダプトの普及活動を行う
公式サイト
✔ Petfinder(ペットファインダー)
- 全米のアダプト可能な動物を検索できるオンラインプラットフォーム
公式サイト
✔ Best Friends Animal Society(ベストフレンズ・アニマル・ソサエティ)
- 「ノーキル(殺処分ゼロ)」運動のリーダー的存在
公式サイト
💡 ペットショップに行かなくても、オンラインで保護犬の情報を調べてアダプトすることが可能!
アメリカのアダプト文化が広まった理由
なぜアメリカではアダプトが一般的になったのでしょうか?
主な理由をまとめました。
📌 アメリカでアダプト文化が根付いた理由
✅ 保護施設の数が多く、アクセスしやすい
✅ 「Adopt, Don’t Shop」キャンペーンの浸透
✅ セレブリティ(有名人)が保護犬を迎え、影響を与えた
✅ ペットショップの販売を規制する法律が増えている
✅ 保護犬を迎えることが「社会的に評価される」文化になった
特に、ハリウッドの有名人やインフルエンサーが保護犬を迎えることで、アダプトの認知度が上がったのが大きな影響を与えています。
💡 「保護犬を迎えることがかっこいい」と思われる文化がある!
アメリカのアダプトから学べること
アメリカでは、ペットを迎える選択肢としてアダプト(保護犬の譲渡)が一般的になっていることがわかります。
✅ 「Adopt, Don’t Shop(アダプト、ドントショップ)」運動が普及
✅ 保護犬を迎えることが社会的に推奨されている
✅ 譲渡システムが整備され、オンラインで簡単に探せる
✅ ペットショップの規制が進み、アダプトが当たり前になっている
6.ドイツのティアハイムとは?|世界最高水準の動物保護制度とペットショップ禁止の理由 🇩🇪🐶
ドイツは、世界でもトップレベルの動物福祉(アニマルウェルフェア)を誇る国です。
その象徴的な存在が、「ティアハイム(Tierheim)」と呼ばれる動物保護施設です。
また、ドイツではペットショップで犬や猫を販売することが禁止されています。
なぜドイツではペットショップでの販売が禁止されているのでしょうか?
また、どのような制度が整備されているのでしょうか?
ティアハイム(Tierheim)とは?
ティアハイムとは、動物保護施設のことを指し、ドイツ全土に約500カ所以上存在します。
🐶 ティアハイムの特徴
✔ 民間の動物保護団体が運営(国営ではない)
✔ 犬・猫だけでなく、ウサギ・鳥・爬虫類なども保護
✔ 寄付や会員制度で運営され、安易な殺処分は行わない
✔ 譲渡する際は、厳しい審査とマッチングを行う
ドイツ最大のティアハイムは、ベルリンの「ティアハイム・ベルリン(Tierheim Berlin)」で、
🐾 敷地面積 約16万㎡(東京ドーム約3.5個分)
🐾 収容可能数:犬・猫・その他合わせて約1,500頭以上
🐾 年間の保護動物数:約1万頭以上
💡 ポイント ✔ 広大な敷地で動物たちがストレスなく暮らせる環境を提供
✔ 動物を譲渡する際は、厳格な審査を行い、適切な飼い主を見つける
✔ 政府の支援なしで、寄付や会員費によって運営されている
🐾 ティアハイムの役割
- 保護された犬や猫の新しい里親探し
- 虐待や飼育放棄された動物の保護
- 動物行動学の専門家がしつけやリハビリを行う
- 動物が終生暮らせる環境を整える
📌 ドイツでは、ティアハイムが「ペットを迎える場所」として一般的!
ドイツでペットショップでの販売が禁止されている理由
日本ではペットショップで犬や猫を買うことが当たり前ですが、
ドイツではペットショップでの犬猫の販売は法律で禁止されています。
その背景には、動物福祉の観点からの明確な理由があります。
🐾 ペットショップ禁止の理由
✅ 1. 劣悪な環境での大量繁殖を防ぐため
- ペットショップで販売される犬猫の多くは、「パピーミル(劣悪な繁殖場)」で生まれます。
- 狭いケージで育てられ、母犬は何度も出産させられる。
- 結果として、遺伝的疾患を持つ犬が多くなり、健康状態が悪化。
✅ 2. 安易な衝動買いを防ぐため
- ペットショップでは、「かわいい!買おう!」と衝動的に犬を迎えてしまうケースが多い。
- しかし、犬を飼うことは10年以上の責任が伴う。
- ドイツでは、ペットを家族に迎えることは慎重に考えるべきものという考えが強い。
✅ 3. 捨て犬・捨て猫を減らすため
- 「犬を飼いたいなら、まずティアハイムへ」という考え方が定着している。
- これにより、保護犬・保護猫の譲渡が進み、不要な繁殖が減る。
- 日本では、ペットショップで売れ残った犬猫が廃棄されるケースもあるが、ドイツではそのような問題が起こりにくい。
💡 結論: ✔ ドイツでは「商業目的の犬猫販売は禁止」されており、ペットを迎えるなら「ティアハイム」が基本!
ドイツの動物保護制度の特徴
ドイツでは、「動物は人間の所有物ではなく、権利を持つ存在」と法律で定められています。
📜 ドイツの動物保護法(Tierschutzgesetz)
ドイツの動物保護法(Tierschutzgesetz)では、以下のような規定が定められています。
✅ 動物虐待の禁止(最高3年の懲役 or 罰金25,000ユーロ ≒ 400万円)
✅ 犬の鎖飼育(繋ぎっぱなし)の禁止
✅ 無計画な繁殖や販売の禁止
✅ 犬の一人ぼっちでの留守番は原則禁止(1日数回の散歩義務あり)
✅ 違反者には厳しい罰則が課せられる
💡 日本との違い ✔ 日本は動物虐待の罰則が軽い(懲役2年・罰金200万円)
✔ ペットショップでの販売規制がないため、大量繁殖が行われている
ドイツのティアハイムとアメリカのアダプトの違い
アメリカのアダプト(Adopt)文化とも比較すると、ドイツのティアハイムには独自の特徴があります。
項目 | ドイツ(ティアハイム) | アメリカ(アダプト) |
---|---|---|
ペットショップ販売 | 禁止 | 州によって規制あり |
保護施設の運営 | 民間団体が中心(国の支援なし) | 公営・民間が混在 |
譲渡の厳しさ | 面談・家の環境審査あり | 比較的スムーズ |
殺処分の有無 | 殺処分ゼロ | 一部の州では殺処分あり |
寄付や会員制度 | 活発に行われている | 団体による |
ティアハイムから学べること
ドイツのティアハイムとペットショップ禁止の制度は、動物福祉を最優先した仕組みになっています。
✅ ペットショップでの犬猫販売を禁止し、安易な衝動買いを防ぐ
✅ ティアハイムで適切な飼い主とマッチングを行う
✅ 厳格な動物保護法で、動物の権利を守る
7.まとめ
日本以外に目を向けると、保護犬についての考え方や動物愛護の考え方には各国の歴史があ流ことがわかりました。これからも日本の動物愛護の文化は進化していくと思いますが、自分たち自身も知識を深めていきたいですね。