1-1.保護犬とは?その定義と現状

1.保護犬の基礎知識

はじめに

日本では年間約20,000頭以上の犬が飼育放棄され、保健所やシェルターに収容されています。こうした犬たちを新しい家族として迎え入れる「保護犬の里親」になることは、命を救う素晴らしい行為ですが、単に「かわいそうだから」と感情的に迎えるだけではうまくいかない場合もあります。

私は元保護犬のいっちゃんを保護団体である「ちばわん」から譲渡いただきました。

この記事では、私が調べた保護犬を迎える前の準備、受け入れ後の対応、共に幸せに暮らすためのポイントを解説します。これから保護犬を迎えようと考えている方にとって、実践的な情報を提供することで、より良いペットライフをサポートできれば、と思っています。

1. 保護犬の定義とは?

(1) 保護犬とは?

保護犬とは、何らかの事情で元の飼い主と暮らせなくなり、保健所や動物愛護団体などに保護されている犬のことを指します。彼らは新しい飼い主を探している「里親募集犬」として扱われることが多く、一定の手続きを経て新しい家庭に引き取られることになります。

保護犬には、以下のような犬が含まれます。

  • 飼い主に捨てられた犬(飼育放棄)
  • 迷子になり、飼い主が見つからなかった犬
  • ブリーダーによって不要とされた犬
  • 虐待やネグレクト(育児放棄)を受けた犬
  • 多頭飼育崩壊で保護された犬
  • 災害や事故などで飼い主を失った犬

このように、保護犬の背景はさまざまで、すべての犬が同じ状況で保護されるわけではありません。
いっちゃんは「野犬から生まれた犬」です。
生後2ヶ月の頃、兄弟犬と一緒に発見され、保健所に引き取られました。
その後すぐに、保護団体「ちばわん」の保護スタッフの方に引き取られたそうです。

(2) ペットショップやブリーダーの犬との違い

保護犬とペットショップやブリーダーから購入する犬との大きな違いは、その「生い立ち」にあります。

比較項目保護犬ブリーダー、ペットショップ出身の犬
出自捨てられた犬・迷子・ブリーダー崩壊商業目的で繁殖された犬
健康状態過去に病気やケガがある場合も健康管理されている
価格譲渡費用、寄付金など数万円~数十万円
年齢成犬、老犬から子犬から育てることが多い

このように、保護犬にはさまざまな背景があるため、迎え入れる前にしっかりと理解し、受け入れる準備をすることが大切です。

2. 日本における保護犬の現状

(1) 殺処分の現状

日本では、毎年多くの犬が殺処分されています。環境省の統計によると、2022年度には約5,635匹の犬が殺処分されました。この数は過去に比べると減少していますが、依然として多くの命が失われています。

殺処分が行われる理由には以下のようなものがあります。

  • 飼育放棄による収容増加
  • 迷子になった犬が飼い主に引き取られない
  • 保健所の収容能力の限界
  • 引き取り手が見つからない

多くの自治体や動物愛護団体が、殺処分を減らすための努力を続けていますが、根本的な解決策としては「保護犬を迎える文化の普及」が不可欠です。

(2) 多頭飼育崩壊の問題

最近、特に問題視されているのが「多頭飼育崩壊」です。これは、個人が適切に管理できないほど多くの犬を飼育し、最終的に飼いきれなくなる状態を指します。

  • 食事が十分に与えられない
  • 繁殖がコントロールされず、犬の数が増え続ける
  • 衛生管理が行き届かず、病気が蔓延する
  • 近隣住民とのトラブルが発生する

このような状況が起こると、行政や動物愛護団体が介入し、多くの犬が一斉に保護されることになります。近年、多頭飼育崩壊による保護犬の増加が問題視されています。

3.保護犬を迎える文化の広がり

(1) 保護犬を迎える人の増加

日本では近年、保護犬を迎える家庭が増えつつあります。背景には、以下のような要因が考えられます。

  • SNSやメディアを通じた情報発信の増加
  • 動物愛護の意識向上
  • 有名人やインフルエンサーによる保護犬支援活動

一方で、まだまだペットショップで犬を購入する文化が根強く、「ペットは買うもの」という認識を変えることが求められています

(2) 海外における保護犬の文化

海外では、日本よりも保護犬の譲渡文化が進んでいる国が多くあります。

アメリカ

  • 保護施設(シェルター)の数が多く、里親制度が充実している
  • 「アダプト(Adopt)」という考え方が一般的

ドイツ

  • 「ティアハイム(動物保護施設)」が充実
  • ペットショップでの犬の販売を禁止している

このように、海外ではペットを「買う」よりも「迎える」ことが一般的であり、日本でもこの考えを広めることが重要です。

4. 日本国内の保護犬支援団体の紹介

日本には、保護犬を救うために活動している多くの動物愛護団体があります。これらの団体は、捨てられた犬や虐待を受けた犬の保護、医療ケア、リハビリ、里親探しなどを行い、1匹でも多くの犬が幸せに暮らせるよう尽力しています。

ここでは、日本国内で特に注目されている保護犬支援団体を紹介し、それぞれの活動内容について詳しく解説します。

(1) 公益財団法人 日本動物愛護協会(Japan Animal Welfare Society, JAWS)

概要

日本動物愛護協会(JAWS)は、1956年に設立された歴史ある団体で、全国的に動物保護・福祉活動を展開しています。保護犬の救済だけでなく、法律の改正提案や動物愛護意識の啓発活動も行っており、日本の動物福祉の向上に貢献しています。

主な活動

  • 動物保護施設の運営
  • 保護犬・保護猫の里親探し
  • 動物虐待防止活動・啓発
  • 動物福祉法の改善提案

支援の方法

  • 里親になる
  • 寄付・会員登録
  • ボランティア活動

公式サイトhttps://jspca.or.jp/

(2) 認定NPO法人 ピースワンコ・ジャパン(Peace Wanko Japan)

概要

ピースワンコ・ジャパンは、広島県を拠点に活動する動物愛護団体で、「日本の犬の殺処分ゼロを目指す」ことを目的に活動しています。シェルターでの犬の保護・譲渡だけでなく、災害時の動物救助や高齢者向けのペット介護支援など、多方面にわたる支援を行っています。

主な活動

  • 殺処分ゼロプロジェクト
  • 保護犬の譲渡活動
  • 災害時の動物救助
  • ペットと高齢者の共生支援

支援の方法

  • 里親になる
  • 月額支援プログラム「ワンコ応援団」への参加
  • 企業・法人としての協賛

公式サイトhttps://peace-wanko.jp/

(3) 認定NPO法人 日本アニマルトラスト(Japan Animal Trust, JAT)

概要

大阪府に拠点を置く日本アニマルトラスト(JAT)は、「ハッピーハウス」という動物保護施設を運営しており、犬や猫だけでなく、ウサギや鳥などさまざまな動物を保護・譲渡しています。特徴的なのは、譲渡が難しい犬でも生涯面倒を見る「終生飼育」を行っていることです。

主な活動

  • 保護犬・保護猫の救助と譲渡
  • 終生飼育システム(譲渡されなかった動物を終生飼育)
  • 動物介在教育(動物を通じた教育活動)
  • 動物虐待の防止活動

支援の方法

  • 里親になる
  • ボランティア活動に参加
  • 物資寄付(フード・毛布など)

公式サイトhttps://happyhouse.or.jp/

(4) 特定非営利活動法人 ワン・ハート・東京(One Heart Tokyo)

概要

東京都内で活動するワン・ハート・東京は、保健所に収容された犬をレスキューし、新しい飼い主を探す活動を行っています。シニア犬や障害を持つ犬にも積極的に里親を探し、どんな犬でも幸せになれるよう支援しています。

主な活動

  • 保健所や動物愛護センターからの保護犬のレスキュー
  • 高齢犬や障害犬の譲渡活動
  • 里親向けの飼育指導・トレーニング
  • TNR活動(野良犬・猫の避妊去勢手術)

支援の方法

  • 里親になる
  • ボランティアとして活動
  • 医療費や食費の寄付

公式サイトhttps://onehearttokyo.jp/

(5) 特定非営利活動法人 わんにゃんレスキュー(Wan Nyan Rescue)

概要

主に関東地方で活動するわんにゃんレスキューは、「捨てられた犬や猫に第二のチャンスを」をモットーに、保護活動や譲渡会を積極的に行っています。特に、ペットショップに並ぶ前の子犬や子猫をレスキューし、新しい飼い主に迎え入れてもらう活動も行っています。

主な活動

  • 保健所・動物愛護センターからの犬猫レスキュー
  • 保護犬・保護猫の医療ケアとリハビリ
  • 里親募集・譲渡活動
  • 飼い主向けの飼育指導

支援の方法

  • 里親になる
  • 物資寄付(フード・ペットシーツなど)
  • SNSで情報拡散

公式サイトhttps://wannyanrescue.org/

5. 保護犬支援団体の課題と今後の展望

(1) 保護施設の運営資金の問題

多くの保護団体は、寄付やボランティアの支援に頼って運営されているため、資金不足に悩まされることが少なくありません。特に、医療費やフード代は大きな負担となります。

  • 1匹の犬を救うために必要な費用は約5万円~20万円
  • ワクチン・避妊去勢手術・ノミダニ駆除・健康診断などの医療費がかかる
  • フードやトイレシートなどの日用品費用も必要

このように、継続的な支援が重要となります。

(2) 里親探しの難しさ

保護犬の中には、人間不信に陥っていたり、しつけができていなかったりする犬も多いため、新しい家庭に馴染むまで時間がかかることがあります。

  • 怖がりで人に近づかない犬
  • トイレトレーニングができていない犬
  • 吠え癖がある犬

そのため、里親となる人には「犬の過去を理解し、長い目で向き合う覚悟」が必要です。

6. まとめ

日本には、保護犬を救うために活動する多くの団体があります。彼らは、保護・医療・リハビリ・譲渡・啓発活動を通じて、犬たちが新しい家族と出会えるよう努力しています。

保護犬の未来をより良いものにするために、私たち一人ひとりができることは何か?

まずは、支援団体の活動を知り、可能な範囲でサポートすることから始めてみませんか?

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